加太ゼミ13期カブト         HOSEI univ.


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Q 観光文化論ってなんですか?

A 一言でいいますと、一定の枠組みの中に生活する人々と観光行為や風景との間にある関係を、根底にまでおりて、しかも多方面から広く考えてみる学問です。

Q ん?分かったようで、いまいち分からないですね

A えーとですね、どうして人は観光をするのか、とか、そもそも観光ってなんなんだろう、とかいうことを考える学問なんです。

Q もうすこし具体的に説明してください。

A たとえば、ある特定の場所(ディズニーランドなど)やモノ(エッフェル塔)が観光の対象となるのはどうして?とか、旅先で写真を撮って、ついおみやげを買ってしまう日本人ってなんなんだろう、とか、ヨーロッパ人が地中海などの海のリゾートが好きなのはいつ頃始まったことなのか、それはなぜ?とかいうことですね。こういう疑問を探ると観光の本質や意味が分かってきそうですね。ま、こういうことを勉強するのが観光文化論です。

Q なるほど、なんとなく・・・。ところでそれはどうやって勉強するんですか。

A そう、じつは、多少厄介でしてね。その理由に、ひとつは、観光学そのものがまだほとんど手探りの状態なので、既存の学問領域のように、これを学べばだいじょうぶと言えるようなモデルとなる理論や教科書的な必須文献と言えるようなものがないことがあげられます。

Q それは困りますね。ゼミではどうしているんでしょ?

A ゼミに入ってもらいますと、まず、観光事例などを利用して、みんなで討論などをしながら、文化科学的考え方やアプローチの手法を多少時間をかけても広くつかんでもらうことをはじめます。この学習は観光文化の意味を理解してもらうこととか、分析用具(理論)の獲得にたいせつな過程だと考えています。ここを手抜きすると、単に観光旅行の体験談や印象的な雑談になります。また、行政や企業の行う観光施策などの弊に陥ります。というのは後者はほとんどがわが国では悲しいことに理論も思想もない貧困な経済主義でしかありません。

◆コクド前会長の堤義明氏の逮捕を知っているでしょ。彼は大学時代に観光学会というサークルを立ち上げたそうですが、日本では観光=不動産開発なんですね。いくつかの大学にある観光学部などもほとんどがが経営学が主流で、日本の観光学の貧困さをよく表しています。
◆堤氏は政界ルートから、インフラ整備や巨大イベント開催(長野オリンピック)に関する情報を得て、いち早く開発用地の確保や開発許可を得るということをやってきました。
◆野尻湖畔は上信越高原国立公園の中にあり、開発規制の厳しい場所なのですが、湖岸の林を切り開いてプリンスホテルが建てられました。地元の民宿のおやじさんたちは「あそこは、樹木一本切れねえ場所なんだけどなあ」と不思議がっていました。
◆全国にゴルフ場、スキー場、ホテルを160も開発し、自然環境だけでなく文化環境に影響を与えてきました。今回の事件は、有価証券報告書の虚偽記載の事案ですが、われわれとしては、こういう大規模な観光開発で成り立つ会社が存在する日本社会を考え直すよい機会でしょうね。

Q つまりは、文化の視点からの観光の研究と考えていいでしょうか?

A そうですね。観光の研究といいますが、実は、今言ったように、大切なのは、旅行業の専門学校的な勉強とか開発プロパーの問題ではないでしょうね。ツーリズムの本筋を、深いところで大きくつかみとる勉強をこそ学生時代にぜひ学んでもらいたいと思っています。ただ、そうは言っても、このゼミでは、文化理論一筋というわけではありません。とくに、観光行為の勉強は現実から遊離してはなかなかよい成果を得にくいのです。ですからおおいに外へ出て事例研究をしたり、旅行会社などから講師の方を招いて実情に即したお話を聞いたりもして、観光問題の現状認識もしかっかりつかんでもらいます。 観光旅行にもおおいに出かけてください。

◆たとえば、イタリアのフィレンツェ。この町には年間200万人近くの観光者が訪れます。この町は観光開発されたから人が集まるのでしょうか。そうではないことは誰でも分かります。ルネサンス時代からの景観や文化財を大切に守ってきたからこそ魅力的な町なのですよね。観光振興の大切なキーワードはその場“らしさ”の保持や醸成にこそありそうですね。
◆一方、美しい海浜の松林を伐採してしまってレジャ施設を建て、それが観光開発だと思うのはどこかいびつな文化じゃないでしょうか。目の前の海でなく、敷地内プールに客を囲い込む事はどこかおかしいと思いませんか。
◆つまり、”らしさ”というのが観光文化を考えるときの大切なキーなんです。

Q このゼミではガイドブックを作るということをききましたが、その学習内容について教えてください。

A 学外へ出て、観光対象や町並みや自然景観や特定の対象(川とか地域など)を観察し、取材し、写真を撮り、記述し、それを本格的なガイドブックに構成し出版することです。その目的は、観光のまなざしの意味発見にあります。もちろんそのための企画・立案・事前調査などにも労力を注ぐ必要があります。この総合的な活動を通して、人の行為(文化)と観光の関係を創造的に探求・模索していく試みにせまり、一定の成果を得ることができたと思っています。その内容については  「活動記録と成果」(卒論や就職内定先もあわせて紹介しています) をぜひ見て下さい。

Q まとめていうと、ゼミでは1年間でどういうことをすることになりますか?

A ゼミ活動の柱は次の3つです。
1)文献講読
観光や旅や景観にかんする理論書や研究書を読みます。分野は多岐にわたります。社会学はもちろんのこと文化人類学、民俗学、農学、歴史学、哲学などからの成果を比較的平明な文献を使用して学びます。

2)事例研究
新聞記事や旅行記やエッセーなど手近な素材をどん欲に活用して、観光を「問題」として扱う視点とコツを養います。たとえば「熱海で旅館の閉鎖が増加」という新聞記事ひとつからでもさまざまな観光問題を設定することができます。温泉旅行という観光行為、大都市近郊の観光の意味、会社の慰安旅行や団体旅行という日本的慣行、大型ホテルなど宿泊施設のサービス形態や規模の問題、海辺の景観環境の問題など、文化的現象として多方面から解析することができます。

3)フィールド活動
ガイドブック制作や景観の観察報告、観光問題の提起をしてもらいます。これには企画力はもちろんのこと取材や記述の技術などおおくのことが求められます。とくに文章力は大切です。見る力と合わせて、見たものを効果的に目的志向的に表現するプレゼンテーション能力の向上にも役立てるようにしたいですね。そうとうに時間のかかる作業です。春休みも夏休みも返上ということもありえますのでそうとう覚悟をして企画参加をしてもらいたいです。
Last up data : 2008.10.19